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膝関節に使用する人工関節「人工膝関節」について解説

大腿骨と脛骨、膝蓋骨から構成されている膝関節は、歩くときや立ち座りするときなどの動きにおいて重要な役割を持つ関節です。しかし、膝関節は変形性膝関節症や関節リウマチなどの病気によって、動きが悪くなったり、痛みを感じるようになったりすることがあります。このような膝関節の障害が持続し、日常生活に制限がある場合、治療法のひとつとして人工膝関節置換術という方法があります。

今回は、人工膝関節とはどのようなものなのか、どんなときに人工膝関節置換術を行うのかなど、人工膝関節について解説します。

人工膝関節とは?

人工膝関節とは、金属やポリエチレンなどの素材から作られた人工の膝関節のことです。変形性膝関節症や関節リウマチなどによって膝関節に痛みや動きの制限が生じ、日常生活に不自由さを感じたときに症状を改善させる有効な治療法です。具体的には以下に示すような手術であり、傷んだ膝関節を人工膝関節に置き換えます。

人工膝関節には膝関節全体を人工膝関節に置換する人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty : TKA)と、膝関節の一部を人工膝関節に置換する人工膝関節部分置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty : UKA)があります。病態や症状に合わせ術式が選択されます。

従来の人工膝関節は長期間の使用に耐えられず交換が必要となることがありました。しかし、現在では素材やデザインの進捗により人工膝関節の耐久性が飛躍的に向上し、手術をしてから30年以上の長期間にわたり90%以上の症例で問題なく使用されています。

人工膝関節置換術は、膝の痛みや動きの悪さを改善することにより、生活の質を向上させることから国内での手術件数が年々増加中です。近年では、年間9万件を超える人工膝関節置換術が行われています。

人工膝関節はどんなときに考慮されるのか?

人工膝関節の手術が考慮されるケースとしては、以下の病態が挙げられます。
  • 変形性膝関節症
  • 関節リウマチ
  • 特発性膝骨壊死症など

変形性膝関節症を発症すると、膝関節の骨や軟骨がすり減って、動きに制限が生じたり、痛みが起きたりします。また、O脚やX脚といわれる膝が内側や外側に曲がった状態になることもあり、徐々に歩行に制限を感じてくることが多いでしょう。

このように日常生活に支障が出てしまったときに、傷んでしまった膝関節を人工膝関節に置き換えることで、関節の動きや痛みの劇的な改善を期待できるのが人工膝関節の最大のメリットです。

人工膝関節の手術方法は?

人工膝関節の手術は、通常全身麻酔後、皮膚を切開して大腿骨と脛骨それぞれの関節表面を削り、人工膝関節を取り付けます。必要に応じて大腿骨と脛骨だけではなく、膝蓋骨にも人工関節を設置することがあります。削り取る骨の厚みは、人工膝関節の部品の厚みである1cm程度です。

膝の動きや関節のバランスが適切であることを確認したら、人工膝関節を設置します。人工膝関節を骨に設置する際に、骨セメントといわれる医療用の接着剤を使用することがあります。最後に切開した皮膚を縫合して手術は終了となります。

手術時間は手術をする病院や患者様の状態などによって個人差がありますが、手術室に入ってから戻るまで2時間から3時間程度が目安です。

人工膝関節の手術後の経過は?

人工膝関節の手術直後は、手術の影響によって腫れたり内出血した状態となりますが、時間の経過とともに軽減します。

痛みの原因であった傷んだ膝関節が人工関節に置換されるため、痛みの劇的な改善が期待できます。また、関節の変形によって膝関節の動きが障害されていた場合には、動きの改善も期待できます。

しかし、人工膝関節に置換したからといって関節の動きが完全によくなるとは限りません。術後の関節の動きは、術前の膝関節の状態や術後のリハビリテーションなどの影響を受けます。

そのため、人工膝関節の手術後は最大で膝関節が120°〜130°曲がる程度になるため、正座や床から重い荷物を持ち上げる動作などに注意が必要です。ただし、手術をした方の中には130°以上、膝関節が曲がるようになる方もいます。

人工膝関節の手術後は、筋力低下の回復や関節の動きを改善させるためにリハビリテーションが重要となります。基本的に手術翌日から、歩行訓練や日常生活動作の練習などを行います。

まとめ

人工膝関節は、金属やポリエチレンなどの素材から作られた人工の膝関節です。変形性膝関節症や関節リウマチなどで膝関節に痛みや動きの制限などが生じると、歩くことや日常生活動作に支障が出ることは少なくありません。

傷んでいる膝関節を人工膝関節に置き換えることで膝関節の問題が改善され、生活の質の向上につながります。膝に痛みや動きの悪さ、歩きにくさなどを感じているときには、是非専門医を受診してみましょう。人工膝関節によって、あなたが抱えている問題が劇的に改善し、目の前の人生が変わるかもしれません。

【参考資料】
人工関節置換術のご案内|康心会汐見台病院/神奈川県横浜市