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股関節に使用する人工関節「人工股関節」について解説

両脚の付け根にある股関節は、身体の中心にあり自由度が高い動きを持ちつつ、立っているときも座っているときも全体重を支える重要な関節です。

しかし、股関節は変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死症などの病気によって痛みを感じたり、関節の動きが悪くなってしまうことがあります。このような股関節の障害が持続し、日常生活に制限がある場合に考慮される治療法として人工股関節置換術という方法があります。

今回は、人工股関節とはどのようなものなのか、どんなときに人工股関節置換術を行うのかなど、人工股関節について解説します。

人工股関節とは?

人工股関節とは、金属やセラミック、ポリエチレンなどの素材から作られた人工の股関節のことです。変形性股関節症や関節リウマチなどによって傷んだ股関節を人工股関節に置き換える手術のことを人工股関節置換術といいます。

人工股関節を構成する部品は以下のとおりです。
  • ソケット
  • ライナー
  • ヘッド
  • ステム
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ソケットはカップとも呼ばれ、骨盤側のくぼみに取り付ける部品です。ライナーは骨盤側の、ヘッドは大腿骨頭の軟骨の役割を果たします。

ライナーとヘッドで球関節を完全に再現できるため、本来の股関節のような自由度の高い動きを実現することができます。ステムは大腿骨に埋め込んで固定し、股関節にかかる力を支える土台の役割を持ちます。

股関節は全体重を支えさまざまな動きで負担がかかる関節であり、従来、人工股関節の耐用年数は20年程度と報告されていました。しかし近年、素材、デザインの改良や手術方法の進捗により、人工股関節の耐用年数は飛躍的に向上しています。実際、現代の人工股関節は手術後20年以上の長期間にわたり90%以上の症例で問題なく使用されています。

手術により劇的な徐痛効果や関節機能の改善が得られるため手術件数は年々増加しています。日本国内の手術件数は年間7万件を超えると報告されています。

人工股関節はどんなときに考慮される手術なのか?

人工股関節の手術が考慮されるケースとしては、以下の病態で理学療法や内服治療などの保存治療が無効な場合です。
  • 変形性股関節症
  • 関節リウマチ
  • 大腿骨頭壊死症 など

我が国の変形性股関節症の原因の80%以上は、生まれつき股関節の適合性が不十分な臼蓋形成不全や、乳児期に股関節が脱臼してしまう発育性股関節形成不全の後遺症です。最近は高齢化社会となったため、特に明らかな原因となる病気に罹ったことがなくても年齢とともに変形性股関節症を発症してくることがあります。いずれの原因でも症状として、股関節の骨や軟骨がすり減り炎症や変形を生じます。発症すると股関節に痛みや動きの制限、脚長差などが生じます。

関節リウマチは自分自身の免疫細胞が、自分自身の細胞を攻撃してしまい、全身の関節に炎症を起こしてしまう病気です。股関節に関節リウマチが発症することで、関節軟骨や骨を破壊して、痛みや関節の変形を引き起こします。

大腿骨頭壊死症は大腿骨の骨頭への血流が阻害されて、骨頭が壊死してしまう病気です。ステロイドやアルコールなどが危険因子とされていますが、原因が特定できない特発性の場合もあります。

人工股関節は障害が起きている股関節を人工関節に置き換えることにより、劇的な徐痛効果や股関節機能の改善が期待できます。

人工股関節の手術方法は?

人工股関節置換術は、病院や患者様の状態により異なりますが、全身麻酔で行われることがほとんどです。人工股関節置換術の最大の目標はソケットやステムを正確に設置することです。まず変形した大腿骨頭を切除し、傷んだ臼蓋の表面の骨を削ります。臼蓋にソケットを固定し、軟骨のかわりとなるライナーをはめ込みます。大腿骨側にはステムを骨の中に挿入し、その先端に骨頭を設置します。

人工股関節を骨に固定する方法は、骨セメントという固定剤を使用する方法と、使用しない方法の2種類があります。患者様の年齢や骨質、変形の程度により決定されます。

手術時間は病院や患者様の状態などによって違いますが、約1〜2時間程度です。

人工股関節の手術後の経過は?

股関節の障害によって生じていた痛みや可動域の制限については、人工股関節の術後、劇的な改善が期待できます。

手術翌日から立位、歩行訓練を開始し関節可動域訓練や筋力増強訓練、日常生活動作訓練を併せて行なっていきます。自宅退院までの目安は病院や患者様の状態により差がありますが、概ね2〜3週程度です。

人工股関節置換術後に注意しなければならないこととして、脱臼があります。

そのため、人工股関節置換術後は、リハビリで股関節周囲の筋肉を強化して関節の安定性を高めるとともに、日常生活で脱臼しにくい動作などを習得する必要があります。

まとめ

人工股関節は、金属やセラミックなどで作られた人工の股関節のことです。変形性股関節症や関節リウマチなどの病気によって股関節に障害を生じ、痛みや動きに制限が生じたときに最終的な根治療法として人工股関節に置き換える手術を行います。

股関節は歩いたり、日常生活を行ったりするうえで重要な関節であるため、股関節の問題を改善することで生活の質の向上につながるでしょう。股関節に痛みや違和感を感じているときには、ぜひ専門医を受診してみてください。人工股関節によって、あなたが抱えている問題が劇的に改善し、今までできなかったことができるようになる喜びを感じることができるかもしれません。

【参考資料】
人工関節置換術のご案内|康心会汐見台病院/神奈川県横浜市